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児童館におけるソーシャルワーク実践 出版・広報 | 児童健全育成推進財団

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児童館は児童福祉施設として、子ども 自身や子育ての課題を抱えた利用者に 対して、適切な援助を展開することが 求められています。

本書は各地の児童館で取り組まれてい るソーシャルワーク実践を紐解きまし た。児童福祉施設としての価値を高め ることの一助になればと思います。

財団法人 児童健全育成推進財団

本誌について

第 2 章に掲載している事例は全て、各地の児童館のソーシャルワーク実践を基にして制作しています。 ただし、利用者のプライバシー保護を目的に、一部脚色しています。また、登場人物は全て仮名です。

まえがき

監修者紹介

大竹 智(おおたけ さとる)

立正大学社会福祉学部 子ども教育福祉 学科 教授

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児童館におけるソーシャルワーク

��������  児童館におけるソーシャルワークとは��������

事例から学ぶ

�������������������  事例① 障がいのある児童の支援����������   解説����������������������  事例② 児童虐待�����������������   解説����������������������  事例③ 母親の子育て不安への支援���������   解説����������������������  [コラム]学校との連携・協力のとり方  

      「学校となかよくなるヒント」 ������  事例④ 発達障がいのある子どもをもつ保護者支援��   解説����������������������  事例⑤ いじめを心配する保護者支援��������   解説����������������������  事例⑥ 不登校������������������   解説����������������������  [コラム]ソーシャルワーカーのケア���������

事例を記録する

�����������������  記録のすすめ�������������������  日々の記録について����������������   ●ケース記録 経過記録用紙(参考) ���������   ●ケース記録 フェイスシート(参考) ��������   ●プロセスレコード����������������   ●ジェノグラム �����������������   ●エコマップ ������������������  児童厚生員・放課後児童指導員の倫理綱領������  関係機関���������������������  利用者が活用できる相談先�������������

3 4 9 10 14 16 20 22 26    28 30 34 36 40 42 46 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 61

C O N T E N T S

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児童館における

ソーシャルワークとは

■ ソーシャルワーク、主な 6 つの実践方法

 ソーシャルワークには、専門的アプローチとして、以下の6つの実践方 法があります。

①ケースワーク

 個人とその家族員を対象とした個別援助技術。

②グループワーク

 個人とその家族員を取り巻く小集団や組織を対象とした集団援助技術。

③コミュニティワーク

 個人に係わる小地域 ( 地域社会 ) を対象とした地域援助技術。

④ソーシャルワーク・リサーチ

 人々や地域社会にある問題やニーズを調査し、福祉活動の根拠となる社 会福祉調査技術。

⑤ソーシャル・アドミニストレーション

 社会福祉サービスをより効果的に実施するための社会福祉施設運営管理 技術。

⑥ソーシャル・アクション

 社会福祉や政策の改善を求める住民運動など、社会活動援助技術。

■ 児童館におけるソーシャルワークの実践

 児童館においては、子どもとその保護者、一人ひとりが抱える問題に寄 り添い、社会資源を活用し解決を図る「ケースワーク」、子ども集団が持つ 力を活用し、意図した子ども集団づくりとプログラムによって参加した一 人ひとりの子どもの力を伸ばす、または課題解決を図る「グループワーク」、 子どもの生活を脅かす地域社会の問題を地域住民が主体となって課題解決

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が図れるようにする「コミュニティワーク」、これらの援助技術を駆使し、 子どもとその家族や地域社会に生じた生活問題の解決および子ども一人ひ とりの自己実現を支援するために、ソーシャルワーカーとしての機能を発 揮することが大切です。さらに問題や状況に応じて、他のソーシャルワー クの諸方法を併用することが望まれます。

ケースワーク

 ケースワークとは、「個人」を対象に行う援助技術のことです。例えば、 児童館の基本機能のひとつである「子育て家庭の支援」における相談活動 では、相談相手と1対1の関係を保ちつつ、子どもや親の意識、生活態度の 変容を探り、必要に応じて社会資源を活用して問題解決を図ります。この相 談活動の中ではケースワークの援助技術に支えられた実践が求められます。

■ ケースワーク、7 つの原則(「バイスティックの 7 原則」)

 子どもや対象者たちと信頼関係を築くために、ケースワーカーとしての 児童厚生員は、どんな態度で取り組めばいいのでしょう。以下にその 7 つ の原則をあげてみました。

(1)個別化

  子どもや対象者それぞれの特性を認め、大切な唯一の人として、個性   を尊重しながら対応します。

(2)意図的な感情の表出

  子どもや対象者に、自分の感情を自由に表現させます。必要に応じて   憎しみや敵意などの否定的な感情も表出させます。

(3)統制された情緒的関与

  子どもや対象者の感情表現に適切に応答します。その際、ケースワー   カー個人の感情は持ち込まないようにします。

(4)受容的態度

  子どもや対象者のあるがままを受け入れます。

(5)非審判的態度

  是非を問わず、まっさらな気持ちで、子どもや対象者を受け入れます。

(6)自己決定

  子どもや対象者が物事を自らの意志で選択、決定できるように援助します。

(7)秘密保持

  子どもや対象者に関する情報は、他の誰にも漏らしてはいけません。   漏らさないこと(秘密を守ること)を子どもや対象者にも伝えます。

児童館における

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 児童館の活動においては、グループワークが主体となりますが、グループ ワークを円滑に実施するためにも、ソーシャルワークの基本となるケース ワークは重要です。「一人ひとりが大切」 というケースワークの基本を十分 に理解したうえで、グループワークの中に取り入れていくことが必要です。

グループワーク

 グループワークとは、「集団」を対象とした援助技術のことです。児童館

の基本機能に掲げられている 「遊びを通じた子どもの育成」、「子育て家庭 の支援」には、子どもの成長段階に合わせて、一人遊びから集団遊びへと 移行していく過程を重視したアプローチが必要とされます。つまりグルー プワークの理論に支えられた実践が求められているのです。

■ 児童館活動にグループワークが必要なわけ

 児童厚生員は、グループワーカーとしてグループワークを実践し、子ど もたちの集団に関与しながら、集団が持つ力を活用しそれぞれの子どもが 持つ本来の能力を伸ばそうとします。児童館活動の中心となるのが、これ らのグループワークです。

 ではなぜ、児童館活動にグループワークが必要なのでしょう。その理由 は 3 つあります。

 第一に、人間の成長の過程で、対人関係を経験するために最も必要な時 期が、小学校から中学、高校までのいわゆる児童館世代であり、仲間と遊び、 協力し合う経験を積むことが、その後の人生に大きな影響を与えることに なります。

 第二に、少子化傾向にある現代の家族や地域では、人間関係が希薄にな りがちです。その点、児童館活動は、さまざまな人間関係を経験する貴重 な機会になります。

 第三に、学校の友だちとは違う、年齢や居住区が異なる友だちとの交流 を通して、社会参加の原型を学ぶことができるからです。

■ グループワーク成立の基本条件

 グループワークが成り立つための基本条件は、4 つあります。

 第一は、1 グループ 5 ~ 8 人の小集団であること。人数が多くなると活 動の中で相互に影響することが難しくなります。

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 第三は、継続的活動が確保されていること。例えば 2 時間程度の活動で あれば、日をおいて連続企画にするなどの工夫が必要です。

 第四は、グループワーカーがいること。一緒に参加して、全体の状況を 冷静に見て、必要に応じてリーダーを支援するなど、活動を促進していく 役割と、集団の力がマイナスの方向に働いている時には軌道修正する役割 を持ちます。

■ グループワーク、6 つの原則

 

 子どもたちの集団活動がグループワークとなるための 6 つの原則をあげ てみました。

(1)受容

  子どもたち一人ひとりを、人格をもった人として尊重したうえで、そ   の存在を「集団の中の個」として受け止めます。

(2)個人差の尊重

  子どもの成長過程は、個人差が激しいことを配慮し、集団の中での個   別化を図ります。

(3)成就の経験と喜び

  子どもたちが集団活動を展開することで、物事を成し遂げた時の達成   感や、喜びを実感できるように支援します。

(4)制限

  さまざまな配慮をしなくてはならない場面を用意するなど、あえて制   限を設けることで、多様な経験ができるように集団活動を計画します。

(5)段階的取組み

  それぞれが年齢や経験相応の役割を担うことで、自分が周囲の役に立   つ経験や責任をもつ大切さを感じる機会を提供します。

(6)メンバーの相互作用の効果

  自発的行動を尊重するとともに、他 のメンバーとの協力の必要性、チー ムワークも体得できるようにバラン スをとります。

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コミュニティワーク

 コミュニティワークとは、「地域社会」を対象にした援助技術のことです。

地域を舞台として児童館の機能を発揮していくために、児童厚生員には、 関係する団体や組織、近隣の地域・住民へのコミュニティワークの実践が 求められます。

■ コミュニティワーク、5 つの原則

 児童館の行事の際には地域の住民に参加してもらったり、地域全体の生 活の営みをレベルアップする働きかけを行ったりするなど、コミュニティ ワークの内容は実に多彩です。援助を円滑に実践するための 5 つの原則を あげてみました。

(1)個別化

  地域住民の主体性を尊重し、地域の特性に合わせて個別化した対応を   実践します。

(2)プロセス重視

  問題の把握から計画、実行、評価へと移行する一連のプロセスを、住   民と共に進め、主体的に活動する方法を地域住民自身が身につけられ   るように配慮しながら、住民と協働します。

(3)社会資源への関与

  地域の福祉問題解決に向けて、人材、施設、制度、資金など、さまざ   まな社会資源に関する情報を収集し、住民と情報交換しながら調整し   ます。必要な社会資源がない場合には、新たに作りだすこともあります。

(4)総合的把握

  問題を地域という環境の中で把握し、総合的にとらえます。

(5)住民全体

  住民の持つ力を信じながら、主体性を尊重し、必要に応じて専門的な   知識や技術を提供します。

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障がいのある児童の支援

複雑な障がい像を持つ子どもを

「児童館らしい」支援で支えていく

 A児童館に着任したばかりの館長の杉原さんはある日、入り口の方から 大きな物音がするのに気づきました。誰かけんかでもしているのかしら、 そう思って席を立とうとした瞬間、小学 6 年生ぐらいの女の子が奇声を上 げながら事務室に駆け込んできました。

 「ギャー!」

 杉原さんは、室内が何ともいえず嫌な雰囲気になったのに気がつきました。 いつも快活なスタッフたちが、誰も女の子の相手をしようとしないのです。  「どうしてそんな大きな声を出すの?」

 杉原さんが声をかけると、女の子はいっそう大きな声で叫び、暴れます。 まるで、叱られたのを喜んでいるみたい。

 「いつもこうなんです。いったいどうすればいいか��」  スタッフの一人が、そうつぶやきました。

 女の子の名前は、たか子さん。自閉傾向に加え知的障がいがあり、うま くコミュニケーションができません。意味不明の単語を並べたり、汚い言

注意すればするほど、叫び、暴れる子ども

さまざまな課題を抱える、障がいのある子どもたち。児童館は、

こうした子どもたちをどう支えるべきでしょうか。保護者への対

応も含めた、長期的な支援について考えます。

ソーシャルワーク実践課題

A 児童館の取組み例

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葉を連発したり。注意すると「構ってくれている」「遊んでくれている」と 勘違いし、ますます騒いでしまうのです。

 小学 3 年生だったたか子さんが来館するようになった3年前から、ずっ とこの状態が続いているとのこと。これにより、スタッフも大勢辞めてい ると知り、驚いた杉原さんは本格的に対応を考えることにしました。

 たか子さんへの対応策を探り始めた杉原さんが知ったのは、学校と児童 館との問題意識の違いでした。特別支援学校では、たか子さんの障がいは 比較的軽度なものにあたり、先生方もとても楽観的なのです。さまざまな 年齢の子どもが、障がいの有無にかかわらず一緒に遊ぶ児童館ならではの 問題を理解してもらうのは、難しいことでした。

 「自閉の子どもには、課題を与えればおとなしくなる」��こんなアド バイスを受けた杉原さんは、考え込んでしまいました。確かに、たか子さ んがおとなしくなれば、スタッフも他の子どもたちも楽になる。でも、そ れは正しい対応なのでしょうか? 児童館は、子どもたちが交流し、成長 する場所。たか子さんも、みんなと過ごしたいから来館しているはずです。 実際、スタッフに飛びかかってくることはあっても、同年代の子どもには 決して暴力をふるいません。小さな子どもには、とても優しく接します。  「たか子さんは、本当に自閉なのだろうか?」

 こんな疑問を感じた杉原さんは、市の臨床心理士に相談しました。あえ て本人には会わせず、客観的なアドバイスをお願いしたのです。「自閉とい うより精神疾患傾向の特徴があるようだ」という回答は、杉原さんやスタッ フが感じていた印象と一致していました。そこで、「診断名にとらわれず対 応をしていこう」というのが、A児童館の指針になりました。

 学校と連絡をとる中で「保護者と面談ができない」という報告がありま した。たか子さんはお母さんと二人暮らし。児童館ではかろうじて連絡が とれていたため、自宅を訪問したところ、お母さん自身も軽度ですがさま

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ざまな障がいがあることがわかりました。自身も障がいがあるお母さんは、 たか子さんが泣いたり暴れたりするとどうしたらいいかわからず、ネグレ クト(育児放棄)の状態にあったこともわかりました。

 「だから、叱られると『構ってもらえて嬉しい』と思うようになったのね」  児童館として、たか子さんがみんなと遊べるよう支援するのと同時に、 お母さんも支えていくことになりました。

 「たか子さんの行動を観察しよう。今まであったことも書き出してみよう。 絶対にヒントがあるはず」

 スタッフの一人が思い出したのは、たか子さんが「誕生日」に関心を示し、 何百人もの誕生日を記憶していることでした。そこで、新しく知った誕生 日とその人の名前を紙に書いて貼り出し、「お友達ができた」喜びを感じて もらうようにしました。

 「(電車やバスで)騒いでしまうから」と見合わせていた遠足などの行事 にも参加させました。騒いでもいいように、徒歩で行ける場所に行き先を 変更。案の定、たか子さんは大暴れするのですが、一度経験してしまえば 次からは騒がず参加できるようになるのです。試行錯誤しながらも、「でき ること」を一つひとつ増やしていきました。

 たか子さんは独特のこだわりから、あるおもちゃを肌身離さず持ってお り、児童館でも黙認していました。中学卒業を機に「おもちゃは卒業しよ うね」と話しかけると、たか子さんはカレンダーのところに行き、3 月の 欄に「おもちゃの卒業式」と書きました。

 「潜在能力を秘めた、知恵のある子だ」

 そう感じた杉原さんは、臨床心理士のアドバイスを参考に、たか子さん の暴力をやめさせるためのある「作戦」を考えました。

 いよいよ当日。杉原さんとスタッフは、危険なものをできるだけ片づけ、 いつも通りに仕事を始めました。やがて来館したたか子さんは、全員の席

行動を観察することで、対応の糸口が

障がいのある児童の支援

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2

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を回って肩を揺さぶり、耳元で怒鳴ります。事前に打ち合わせていたとおり、 スタッフは誰もたか子さんと目を合わせず、黙々と仕事を続けました。  構ってもらえないことに苛立ち、ひとしきり荒れ狂った後、たか子さん はぴたりと動くのをやめました。そして、こう言いました。

 「もう、こんなことはやめる」

 それは、杉原さんが初めて聞いた、たか子さんの言葉らしい言葉でした。 “荒療治”だったかもしれません。しかしこの日を境に、たか子さんは少し

ずつ周囲との意思疎通ができるようになっていったのです。

 それからのたか子さんは、まるで幼い子どもの発達の過程をそのまま見 るようでした。他の子どもたちやスタッフと遊べるようになり、「人との関 わり」を学び直すことで、大きな成長を遂げたのです。ヘルパーさんが必 要な時には自ら電話をかけて依頼したり、家庭への連絡メモを自分で書け るようになりました。メモによって連絡事項がきちんと伝わるようになり、 児童館とお母さんとの関係も良好になりました。

 杉原さんがたか子さんと出会ってから6年。現在、18 歳になったたか 子さんは特別支援学校の高等部に通学しながら、児童館にも通っています。 学校の姿勢も、児童館から粘り強く働きかける中で、少しずつ変化してき ました。とくに高等部になってからは、さまざまな作業訓練や、買い物な ど日常生活に関する訓練を学校で受けるようになり、たか子さんにも「社 会に出る」自覚が生まれているようです。学校と児童館、それぞれの役割 に合った支援ができるようになった、と杉原さんは感じています。

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児童館だから できることが あります。 A

B

障がいのある児童の支援

事例①

 この事例では、杉原さんは市の臨床心理士に相談し、 客観的な視点からのアドバイスを受けていますね。発達 障がいといってもその障がい像はさまざまですから、子 どもがどのような状態にあるのか専門家に判断してもら うのは大切です。しかし、診断名はあくまでヒント。目 の前の子どもにはどのような支援が必要か、診断に振り 回されることなくアイディアを練っていきましょう。  誰か一人の職員に丸投げするのではなく、児童館全体 の問題としてとらえ、他の利用者も含めたみんなで共有 していく、という姿勢も大事です。その上で、一人ひと りの職員がアイディアを出し合い、何ができるかを模索 していけば良いのです。

 乳幼児期にはじまり、小学校から中学、そして高校 ……長期にわたり子どもと関わっていく中で、何かしら の「ポイント」が見つかるはずです。その子が持つ癖、 こだわり、小さな事件、などなど。それらを糸口に、自 分なりの仮説を立てて子どもに関わりましょう。そうし た関わりを続けることで、子どもは「この人は自分を理 解してくれる」と感じるようになり、児童館職員も「こ れでよかったんだ」と実感します。お互いが成長してい けることが、この仕事の醍醐味ではないでしょうか。

解 説

解説:大竹先生

 障がいのある子どもと真摯に向き合うことが、周 囲の人々の心を動かし、最終的には母子の成長にも つながった事例です。問題を抱えた子どもを「放置 (排除)する」のではなく、「どうしたらいいか考える」

視点を持つことが、すべての出発点になるのだと思 います。

できる

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2

ケースワークの 原則の一つです。

1 A

B

 この事例で、たか子さんは成長するにつれヘルパーさ んを自分で手配したり、行事に参加したい時はメモを作っ てお母さんに渡しています。子どもやその保護者も巻き 込み、役割を与えるこのようなやり方は、ソーシャルワー クにおいてとても重要です。児童館がすべて援助してし まうのではなく、「できること」を引き出し成功体験をし てもらうのです。一つひとつは小さな成功ですが、積み 重ねれば大きな自信になります。こうした取組みを続け ることで、児童館と子ども、保護者が同じ目標に向かっ て進んでいくことができるようになります。

 実は、たか子さんがヘルパーさんを手配する時は、杉 原さんが先回りしてヘルパーステーションに連絡し、た か子さんが暴れても動揺せず対応できる方を依頼してい たそうです。このような細やかな配慮も、スムーズな自 己決定のためには大切だと思います。

 長期的な支援を実施していくにあたり、心がけておき たいことを挙げておきます。

●特別扱いしすぎない。柔軟な対応はもちろん必要です が、その子がどうしたら成長できるかを考えることが 大切です。育ちのペースは人それぞれです。

●大人の来館者への周知を徹底する。児童館へは、乳幼 児を連れた保護者など、大人の利用者も訪れます。課 題を抱えた子どもが来館している場合、子ども同士な ら理解されることでも、大人には理解しがたいことが あるかもしれません。その子どもの置かれた状況や変 化の様子を折りにふれて伝え、あたたかく見守ってい ただける雰囲気を作りましょう。また、障がいのある 人が生活しやすい地域社会を作るために研修会や勉強 会(講演会)などを企画し、地域住民に障がいの理解 を広める活動も大切です。

決めてもらう

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児童虐待

虐待の連鎖をどこかで断ち切るために

学校と家庭をつなぐ児童館の役割は大きい

 伸樹くんがまだ幼い頃に両親が離婚し、伸樹くんは父親の元へ。父親は、 その後再婚し、継母と一緒に暮らすようになりました。

 「ぐず! ほんと、この子は言うことを聞かないんだから!」

すぐに継母の折檻が始まりました。伸樹くんには、発達障がいの可能性も あることから、言いたいことがすぐに言えず、継母をイライラさせていた のかもしれません。父親までもが、伸樹くんに手を出すようになりました。  「なんだ、その態度は! 鍛え直してやる!」

 ほぼ 1 年、毎日くりかえされていた暴力。そんな異常な状態に、偶然訪 ねてきた祖母が気づき、すぐに警察に通報しました。まもなく警察・児童 相談所から指導が入り、伸樹くんは、祖母のところに引き取られることに なりました。

複雑な家庭で虐待発覚!

愛情を注いでくれる保護者は祖母

虐待によって与えられた傷は深いトラウマとなり、友だちや保護

者にまで暴力をふるってしまう被虐待児。児童館として、どこま

で関わり、どのような支援・援助をしていけばよいのでしょう。

課題は多いと言いますが、何度も来館してくる背景には一体何が

あるのでしょうか?

ソーシャルワーク実践課題

M児童館の取組み例

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2

虐待の連鎖をどこかで断ち切るために

学校と家庭をつなぐ児童館の役割は大きい

 新しい家は、祖母、曾祖母と伸樹くんとの 3 人暮らし。祖母はパートを しながら曾祖母を介護しています。虐待を受けていた伸樹くんが不憫で、 祖母は何度も伸樹くんに言い聞かせたそうです。

 「ここはあなたの家、安心して暮らせるところだからね」

 怖い父と継母が住む家を出ることができたとわかった時の、なんともホッ としたような伸樹くんの表情が忘れられず、祖母にとっては精いっぱいに 愛情を込めた声掛けのつもりでした。

 伸樹くんにとっては、初めて訪れた安堵の日々。もう二度と同じ思いは したくありません。病院に通って治療、カウンセリングを受け、情緒を安 定させる服薬も始めました。転校し、児童館も利用するようになっていま した。

 「思えば、この頃が一番穏やかで、精神的に安定しているようでした」と 当時を振り返る M 児童館の児童厚生員の田村さん。伸樹くん、小学校 4 年生の時です。

 伸樹くんの育った環境は聞いていたので、特に注意深く見守っていたと いう田村さん。なんか変だなと最初に気づいたのは、伸樹くんが春休みや 5 月の連休など長い休みが明けると、学校に行かず、まっすぐ児童館にき てしまうことでした。不登校が始まったのです。

 「今日は学校だろ、どうしたの ?」  「つまらないから休んだ」

 この日は朝から機嫌が悪かったので、よくよく話を聞いてみると、「ババ がうるさくってさ。宿題やったか、学校へ行けって、小言ばっかりだよ」。  どうも伸樹くんを思いやる祖母の気持ちが空回りしているようです。何と か仲良くできないものだろうかと頭を悩ます田村さん。保護者の祖母に「話 は聞いてあげるように」「たまには黙って見守るだけに」など、いろいろ助 言はしましたが、伸樹くんはまったく祖母の話は聞いていないようでした。

2

(19)

 その後も、伸樹くんは気持ちが安定せず、次第にトラブルを起こすこと が多くなってきました。服用していた薬は、「効かないから」ととうに辞め ていました。児童館内で、カードゲームの紛失、ゲーム機の貸し借りのケ ンカと、立て続けにトラブルがあったので、注意すると、今度は職員にも 「やってねえよ」「うっせーんだよ」 と暴言を吐いて、反抗的な態度を取る

ようになってしまいました。

 「児童館には友達がたくさん来てるんだ。仲良くできないんだったら、明 日は児童館禁止だぞ!」

 伸樹くんに少しでも館内での過ごし方を改めて欲しいという願いから、 “1 日来館禁止”制限を行いました。しかし、翌日になると、いつものよう

に来館。

 「昨日は昨日、今日は今日」 などと言い、まったく反省の色が伺えません。 伸樹くんの心に、職員たちの気持ちが届かない。援助の方向がわからず、 困り果てることもありました。でも、伸樹くんは、児童館にはよく来ます。  「居心地がいいんじゃないか。ここに来れば、パソコンもあるし、遊んで もらえる。児童館はだれでも受け入れるのが基本だからね」

 「でも、このまま居心地がいいだけじゃ��」

 結局、児童館は居心地のいい“お助け処 ?!”ではないという考えから、 学校と家庭と児童館の三者が集まって、改めて伸樹くんの近況を話し合い、 今後の支援などについて話し合う機会をもつことにしました。

 話し合いの結果、保護者である祖母の希望で、学校で行き詰っている伸 樹くんを転校させました。新しい学校では、サッカークラブに入り、新し い友達もできたようで、しばらくは児童館に来なくなりました。

 しかし、またもや夏休み中に祖母とトラブルがあったようで、不登校に なり、毎日、児童館に通ってきます。しかも今度は、「学校に行かせたかっ たら、金くれよ」 とお金をせびったそうで、祖母は仕方なくお金を渡した

ますますエスカレートする暴力・暴言、

まるで自分がされたことを反復するように

児童虐待

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こともあったそうです。児童館でも、悪びれることなく一緒に遊んでいる 友だちに 「ゲーム機を貸してやるから、金くれよ」 と、すごんだとか。次 第に「伸樹くん、怖い!」「伸樹くんがいるから児童館に行きたくない」と いう声があちこちから聞こえるようになり、再三、注意や指導を行いました。 その都度、伸樹くんは、「うざい、だまれ!」などと暴言を吐きながら、ふ てぶてしい態度を取ります。その姿は、まるで、自分が父親からされたこ とを、そのままやり返しているようでした。

 他の利用者には迷惑をかけられないので、今後、伸樹くんによる迷惑行 為があった場合には、児童館の利用を制限する旨の通知を行いました。田 村さんや職員さんたちにとっては、“虐待の反復行為”という事の背景を知っ ているだけに、苦渋の決断だったと言います。

 その後、児童館には姿を見せなくなってしまった伸樹くん。不登校も続 いているようです。でも児童館も、学校、児童相談所も、継続して彼を見守っ ていくことを申し合わせています。

 保護者の祖母は、ご自分の年齢や体調、そして曾祖母の介護もあり、手 におえなくなりつつある伸樹くんの将来を案じ、児童養護施設への入所も 視野に入れているとか。田村さんは、これは個人的な意見ですが、と前置 きして言います。

 「伸樹くんのような被虐待児へのケアには、大きなエネルギーと時間が必 要です。家庭が安定して初めて、虐待からの回復を考えることができるので、 保護者の方には、なるべく一緒に暮らして、支えて欲しいと思います」  引き続き学校や児童相談所、児童館のスタッフもみんなで伸樹くんと保 護者を支援していくこと、安心して取り組んでほしいことを保護者に伝え、 伸樹くんが、再び、学校へ行き、児童館に来る日をみんなで待っているそ うです。

(21)

個と集団の間で迷 うこともあります。 A

B

児童虐待

事例②

 虐待を受けた子どもがそのトラウマから抜け出すには、 過去の被虐待体験によって生じた心の傷を専門職の力(心 理治療やカウンセリングなど)を借りて、これまでされ てきた経験を受けとめられ、虐待していた親を「あの時 は私にそうしなければならない理由があったんだな」と 赦せるようになることと、信頼できる大人との出会いに よって過去を断ち切ることができるようになること、が 必要だと言われます。

 この事例の伸樹くんにとって、児童館は逃げ場所。そ こでの職員との関係が「信頼できる大人との出会い」に なるかもしれません。けれども、実際はそんなに簡単に はいきませんよね。伸樹くんとそうした関係を結ぶには、 たくさんの時間とエネルギーが必要で、多くの子どもた ちが集まる児童館では、彼だけに支援を傾けられません。 また、他の子への影響もあり、「迷惑行為を繰り返す場合 には利用制限をする」と通知したとありますが、事例の 中の言葉にもあるように、児童館としては、まさに「苦 渋の選択」だったでしょう。

 児童館には、伸樹くんのように、虐待を受けていると 思われる子どもも来ます。ここでは児童厚生員としてど う接すればいいかをお話しておきましょう。

解 説

解説:大竹先生

 これは、児童館の限界を試されているような事例 ですね。虐待を受けた体験から暴力をエスカレート させ、保護者も学校も手に負えなくなりつつある子 どもを、児童館はどこまで受け止め、支援すればい いのか。難しい問題ですが、できることはあるはず です。

「児童虐待」の事例について

ジレンマ

A

B

ヒント

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2

待つことも できることの一つ。

2

 被虐待児はわざと職員を怒らせたり、否定的な行動を

とったりします。これは、「注目してほしい」という気持 ちのあらわれ。子どもの言動は SOS であり、表現行動で あり、心の叫びであるととらえることが大切です。「自分 だけを大事にしてくれるだろうか」という試しの行為で す。これに乗ってしまうと、ますます行動はエスカレー ト。挑発には乗らない、巻き込まれないという態度が必 要です。

 そのうえで、「自分だけの職員」と思える場所をつくっ てあげること。集団生活の場の中で、1対1の個別的な 関わりをもつことも必要でしょう。

 また、虐待の体験は「捨てられるのではないかという 不安」「自己否定」につながっています。そこで、人にほ められる、認められる、必要とされる、感謝される、といっ た場面をつくるようにします。たとえば、職員ができる ことでも、あえてその子にお願いする。終わった後に職 員からかけられる「ありがとう」のひと言が、「自己肯定 感」につながります。

 この事例では、児童館に来なくなった伸樹くんを、児 童館も、学校も、児童相談所も、継続して見守っていく とのこと。この姿勢は大事です。虐待を受けた子どもは、 学校でも、社会の中でも生きづらいことが多いはずです。 相談できる人もなかなかいないでしょう。そんなとき、 よりどころとするのが児童館かもしれません。子どもや 保護者にとって、「地域に児童館がある」ことは、安心感 につながっているのです。

 児童館は、いつでも受け入れる気持ちで、半年後、1 年後にひょっこり彼があらわれたら、笑顔で迎えてやっ てほしいですね。0歳から 18 歳までを受け入れる児童 館です。社会に出る準備の一歩として児童館に来るのだ、 というとらえ方もあります。

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母親の子育て不安への支援

母親の気持ちに寄り添い、

親子のパイプ役となりながら、

家族関係の修復を手助けする

 小学校5年生の俊輔くんは、こだわりが強く、相手の気持ちを理解するこ とが不得意な男の子。T児童館へは2年生のときから来ています。児童厚生 員の野口さんが、その俊輔くんのお母さんとはじめて会ったのは3年前のこ と。俊輔くんが児童館に来るようになって数ヵ月が経った頃です。

 お母さんが児童館を訪れたのは、俊輔くんのズボンのポケットから見慣 れないボードゲームのコマを見つけたからでした。問いただしたところ、 俊輔くんは、それは児童館のもので、知らないうちに誰かに入れられたの だと言います。お母さんは、俊輔くんの説明は嘘で、勝手に児童館から持 ち帰ったのだと判断しました。それで謝罪のために児童館を訪れたのです。  野口さんを前に、お母さんは家での俊輔くんの様子を話し始めました。 言うことを聞かず反抗的な態度をとること、母子が衝突することがよくあ ること��。野口さんは、我が子への怒りに次第に感情的になるお母さん の話を聞きながら、子育ての悩みが根深いのを感じ取りました。

 その後、児童館で遊ぶ俊輔くんに家でのことを聞くと、母親によく怒ら

子育ての不安・悩みを察知する

子育てに一所懸命なのに、子どもとの関係がうまくいかず、いつ

も不安を抱えている。相談できる相手もいない��。そんな母親

に対し、児童館だからこそできる支援の仕方とは?

ソーシャルワーク実践課題

T児童館の取組み例

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母親の子育て不安への支援

れる、叩かれた、といった家庭でのトラブルを話すようになりました。職 員の間では、複雑な問題をかかえた家庭環境かもしれないということで、 注意深く状況を見るケースとして記録をとり始めました。お母さんに対し ては、「お話したいことがあれば、いつでもいらしてくださいね」と声をか けたものの、来館することはありませんでした。

 それから数ヵ月。T児童館に市の子ども家庭支援センターから連絡があ りました。俊輔くんについての問い合わせです。実は、俊輔くん自ら児童 相談所に電話をし、母親とうまくいっていないこと、しょっちゅう怒られ ることなどを相談したというのです。児童相談所から市の子ども家庭支援 センターにフォローアップの依頼があり、センターから児童館にも「そち らでの様子は?」と照会があったというわけです。野口さんは子ども家庭 支援センターに事情を聞きました。それによると、センターでは以前、お 母さんの子育てについての悩み相談があり、その後も連絡をとっていたの ですが、「担当者と気が合わない」という理由で母親のほうから連絡を絶っ てしまったとのこと。児童相談所とも同じような理由で関係が薄れていっ たようです。

 そんなとき、当のお母さんから電話がありました。児童館での俊輔くん の様子を知りたいというのです。何度か電話でのやりとりがあったあと、 野口さんはお母さんに、「顔を見てお話ししたいから、児童館にいらっしゃ いませんか」と誘ってみました。このとき、お茶を飲みながら、じっくり 話をしたことがお母さんの気を楽にさせたのか、以後、俊輔くんとのあい だでトラブルが起きたり、何かあるたびに、電話だけでなく、実際に児童 館に来て、相談したり、悩みを打ち明けたりするようになりました。それ まで細いつながりだけだったお母さんと児童館とのつながりが、これ以後、 密で太いものへと変わっていくのです。

 回を重ねて話を聞くうちに、お母さんの育った家庭環境もわかってきま

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した。幼い時期に親から虐待に近い厳しい躾をされたことが今でもトラウ マになっているようです。お母さん自身はとても真面目な人で、子育ても 一所懸命。親との関係がよくなかった自分の経験から、我が子には同じ思 いをしてほしくないという気持ちがあるのですが、どうすればいいのかが わからない。子どもに関するさまざまな本を読み、インターネットのサイ トを検索しながら、自分に合った子育ての情報や手段を常に求めています。 ところが、見つけて試す→うまくいかない→悩む→落ち込む→俊輔くんを 追い込む→また本やインターネットで探す──といった具合で、自分が描 く子育て像と現実とのギャップ、思うようにいかない俊輔くんとの関係に、 ますます悩みをつのらせてしまうのです。

 3年生に上がったとき、俊輔くんは教育相談で「コミュニケーション能 力が低い」という診断を受けました。お母さんはそれを認めたくなく、教 育相談への嫌悪感をつのらせ、その後は足を運ばなくなりました。児童相 談所や子ども家庭支援センターの例も同様なのですが、さまざまな機関に アドバイスを求めながらも、返ってくる答えや、相手が気に入らないと拒絶、 というパターンなのです。

 俊輔くんのお母さんは、電話をかけてきたときは1時間くらい、児童館 に来たときは、お茶を飲みながら2時間くらい話していくこともあります。 担当窓口は野口さんと同僚のOさんの2人。担当者を固定しているのは、 お母さんが安心して何でも相談できるようにとの配慮から。また2人なら、 お母さんからアクセスがあったとき、どちらかが会議や用事で留守でも、 必ずもう1人が対応することができます。

 野口さんたちが心がけたのは、お母さんの気持ちに心を寄せて話を聴く ことです。批判や批評は口にしません。答えも出しません。「わかる、わか る」「ああ、そうよね」��。夫は仕事で忙しく相談もできない。グチをこ ぼせる友人もいない。そんなお母さんにとって、最後まで話をじっくり聴

批判や批評はせずに「聴く」

母親の子育て不安への支援

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 俊輔くんは相手の気持ちを推し量ったり、自分を表現することが不得意。 お母さんも愛情を上手に伝えられない。そんな気持ちのすれ違いが親子の 摩擦につながります。そこで野口さんたちは、お母さんには俊輔くんの、 俊輔くんにはお母さんの思いを代弁することがあります。俊輔くんを何年 もずっと見てきていて、野口さんは俊輔くんの交友関係、遊び方や性格、 成長の過程など、よく知っています。一方で、お母さんの性格も、悩みの 内容も充分に把握しています。互いの気持ちを汲み取って、相手に伝える 役目ができるのです。

 親子げんかになり、「うちにいなくていい。児童館にでも行きなさい!」と お母さんが俊輔くんを追い出したときのこと。すぐにお母さんから児童館に 電話がありました。「ひどいことを言ってしまった」と泣き声です。野口さ んは俊輔くんに言いました、「お母さん、さっきは怒ってたかもしれないけど、 今頃は悲しい気持ちになってるよ」。いつもは「どうせお母さんは僕の気持 ちをわかってくれない」と言う俊輔くんも、野口さんの言葉に耳を傾けてい ました。

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児童館だから できることが あります。 A

B

母親の子育て不安への支援

事例③

 子どもの育ちは保護者や家庭環境と切り離して考える ことはできません。これからの児童館は、子どもだけを みるのではなく、保護者や家庭に働きかけをする視点が 求められてくるでしょう。

 この事例の児童厚生員の野口さんは、俊輔くんの行動、 お母さんとの何度かのやりとりから、お母さんが抱える 問題を察知し、児童館へ話をしに来るようにと「働きかけ」 をしました。それをきっかけに生まれた児童館との関係 が、お母さんにいい影響をもたらしています。

 子どもたちが日々遊びに通う児童館は、お母さんたち にとっても地域の身近な施設です。その児童館が親とも 関わりをもち、話をちゃんと聞いてくれることを知れば、 子育てに悩むお母さんたちには心強いはずです。児童館 側は、お母さんたちの話を聞く中から問題点が見えてく ると、その問題に応じて専門機関につなげることもでき ます。児童館は、そのとっかかり、きっかけになればい いと思います。

 児童館には通知表はないし評価もしませんから、子ど もたちは学校の先生や親に見せない面を見せたりします。 一方で、悩み相談を通じて親との関わりが生まれると、 お母さんの気持ちや性格も知ることになります。そうな ればこの事例のように、児童厚生員は、関係がうまくいっ

解 説

解説:大竹先生

 悩むお母さんの話を1時間でも2時間でもじっく り聴く──。なかなか大変なことです。この事例の 児童厚生員の野口さんは、本当に一所懸命、対応さ れていますね。他に相談できる人もおらず、行き場 のないこのお母さんにとって、児童館は子どもだけ ではなく、自分(親)にとっても必要な場所のようです。

できる

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求められる スキルです。

3 A

B

ていない親と子、それぞれの気持ちを伝える代弁者となっ たり、すれ違う言葉の真意を伝える翻訳者となって、互 いの理解を促す役割も果たせます。親子関係の修復に力 を貸すことができるんですね。

 保護者との関わりを築き、深めるためにも、今後は、 お母さんたちが気軽に悩みを相談でき、話がしやすい児 童館であることが求められます。それにともない児童厚 生員には、相手の話を上手に聴く技術も必要になってく るでしょう。

 児童館でお母さんたちの相談にのったり、話を聞くと きに心がけておきたいことを挙げておきます。

●話したいことを充分に語ってもらい、批判しないで聴 く。相手は「聴いてほしい」のです。

●アドバイスを求められたら、「こうしなさい」「ああし なさい」と指示しない。選択肢をその結果とともに伝 え、自分で決めてもらうようにします。

●忙しくて時間がないときは、あらかじめ話を聞く時間 を告げておく。話の途中で、「実は時間が……」と中断 させると相手もイヤな気分。「話してよかった」 と気持 ちよく終わらせるためにも、「きょうは○時まで話をう かがいますね」と伝えておきましょう。

●相談者の悩みを一人で抱え込まない。自分だけで受け 止めていると、精神的な負担が大きくなります。話を 聞く担当者は固定していても、情報は常に職員全員で 共有。対応の仕方をみんなで話し合うなど、職員の精 神的ストレスを緩和できる体制づくりも大事です。

上手に聴く

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突然の「連絡・お願い」はうまく伝わらないことがあります

 児童館が、初めて学校との関係をもつ時は、いきなり電話でお願いした りするのではなく、事前に電話で「ご挨拶に伺いたいのですが」と日時の 調整をしましょう。その電話は学校の「教頭先生・副校長先生※ 1」にかけ

るようにするとよいと思います。

児童館が「学校支援ボランティア」になりましょう

 学校では、授業に、地域の様々な方をゲストティーチャーとして協力を お願いしていることがあります。学校に協力してくださる方々を「学校支 援ボランティア」と言いますが、児童館として、どんな協力ができるのか、 積極的にアピール・情報提供することも大切です。学校の職員や子どもた ちとの理解が深まり、連携や協力がとてもしやすくなります。

学校オープンデー・授業参観等に行ってみましょう

 学校では、年間をとおして何回か、授業や行事を地域の人や保護者等に 公開する日を設けています。教頭先生・副校長先生に事前に連絡をして、 日頃児童館でみている子どもたちの様子や学校施設を見てきましょう。職 員や地域の人たちとも挨拶ができるよい機会にもなります。

いろいろな情報がほしいときは

 気になる児童のことや地域・保護者のことで情報が欲しい・相談したい、 という場合は、事前の連絡を入れておくことと、最初に訪問した際に、

学校との連携・協力のとり方

「学校となかよくなるヒント」

 すぐ近くに学校があり、多くの子どもたちが遊びに来ています。

学校に行って「児童館の行事を広報したい」「企画行事の参加者

募集をしたい」「気になる子どもの様子について相談したい」「児

童館の出前プログラムを提供したい」そのようなとき、どのよう

にしたらスムースに学校と連絡がとれるのでしょうか。ここで、

学校と上手に連携・協力の関係が築けるようなヒントを提供いた

します。

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栃木県上三川町立北小学校長 

柳澤 邦夫

(児童健全育成指導士)

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①きちんと名刺を渡して児童館と児童厚生員についての説明を必ずする② 国の児童館ガイドラインのコピーを提出し、守秘義務があることや学校と の連携を積極的に行うことが仕事であることをきちんと説明する③相談す るという手順が大切です。

学校のあれこれ

◎毎週水曜日は「各学校の職員研修日」としていて、会議や研修の出張の ない日になっています。各学校で、授業終了後に職員会議や研修、指導 教材の作成等の時間にしています。このような日でしたら、校長・教頭・ 副校長先生をはじめ多くの職員が居ることになります。(市町村ごとに、 こうした日を設けていることが多いと思います。)

◎朝の時間(授業開始前の 10 分~ 15 分位)、業間の時間(2 校時と 3 校 時の間の休み時間 10 分~ 30 分位)、昼休みの時間(20 分~ 40 分位)に、 読書や運動等、様々な学校独自の活動を位置づけて実施していることが あります。

◎職員に電話で連絡をとる場合は、業間や昼休み・放課後の時間をおすす めいたします。(学校から日課表をいただき、そうした時間を確認して おくとよいでしょう。)

◎学校からいただいておくと便利なものとして、日課表(連絡をとる時刻 や児童の下校時刻等が分かります)や年間学校暦(年間の行事の日時が 分かります)があります。

◎学校には「学社連携係」「地域教育係」「地域連携教諭」といった係や担 当になっている職員がいます。このような担当・係の方の中には、「社会 教育主事有資格者※ 2」という人がいて、学校と地域の人材・施設を上手

に連携させるための専門的知識やスキルをもった人がおりますので、お 願いをすると喜んで児童館との連携窓口になってくださるはずです。

※ 1「副校長」は、平成 19 年の学校教育法改正により、学校に置くことができるとされ、 各自治体により教頭の代わりに副校長を置いたり、その両方を置いたりできるよう になりました。

※ 2「社会教育主事有資格者」は「社会教育主事」という資格をもっている人であり、 地域における社会教育・生涯学習の充実・振興を図る専門的職員です。

公立小学校教諭、大型児童館「栃木県立子ども総合科学館」勤 務を経て、厚生労働省で児童健全育成専門官として、児童館活 動の推進に携わる。平成 23 年から現職。

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 プロフィール

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発達障がいのある子どもをもつ保護者支援

集い、悩みを共有し、何でも語り

合える場づくりで、保護者を支援

 「はじめくんが、ゆうきくんを突き飛ばした」  みかちゃんが職員室に飛び込んできました。

 M児童館の児童厚生員の吉沢さんがプレイルームに駆けつけると、ゆう きくんは床に突っ伏して泣きじゃくり、一方、はじめくんは何事もなかっ たかのように部屋のすみに座り込んで本を読んでいます。どうやら、ゆう きくんの読んでいた本を、はじめくんが強引に取り上げたようです。小学 3年生のはじめくんには発達障がいがあり、自分がしたいことを上手に言 葉にして伝えることができません。そのために、いきなり乱暴な行動に出 てしまうことがあるのでした。

 集団生活が不得手で、みんなと仲よく遊べない子は他にもいます。児童

「自分たちにできることは何か」からスタート

発達障がいのある子どもをもつ保護者は、わが子の障がいとどう

つきあうか、常に悩みながら過し、子どもの今後の成長への不安

もあります。そうした保護者に対し、児童館はどのような支援が

できるでしょうか。

ソーシャルワーク実践課題

M児童館の取組み例

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発達障がいのある子どもをもつ保護者支援

館のスタッフは頭を悩ませていました。はじめくんのような子たちにとっ て、児童館が心地よい居場所になるにはどうすればいいか��。発達障が いのある子をあたたかく見守る地域の人たちの理解も必要です。何より、 保護者自身も、どうしていいかわからずに不安を抱えています。吉沢さん たちスタッフは、子どもたちが周囲からの理解を得られずに孤立し、引き こもりや非行に走ることや、親の虐待につながることも心配します。  「私たちにできることって何だろう」

 吉沢さんたちは、「親の会」が必要だと考えました。当事者である親自身 が集い、語れる場。そこから地域の人々に、自分たちの声を届けることも できます。

 児童館が全面的に支援するとして、「親の会」には、代表となって会を運 営してくれる人が必要です。吉沢さんはやってくれる人を探しました。M 児童館にはファミリーサポートセンターが入っています。吉沢さんが「こ の人だ」と思い、相談をもちかけたのは、サポーターとして活動している 林よしみさんでした。林さんには発達障がいのある子どもがいて、子ども の通う学校で学習支援活動も行っています。

 「“親の会”をつくりたい。林さんなら同じ親の立場で保護者のみなさん と話せるし、会を上手に運営していけるんじゃないかと思う」

 実は林さんも以前から、発達障がいの子をもつ親たちが何でも話し合え る場がほしいと思っていたのでした。ただ、自分一人でやる自信はなかった。 そこに吉沢さんからの申し出です。児童館が支援してくれるのなら心強い 限りです。意見は一致し、会の代表は林さん、児童館側の担当者は吉沢さ んということで、「親の会」の発足が決定。林さんが時間の空いたときに児 童館を訪れ、二人の間で立ち上げのための打合せが重ねられました。毎回、 1時間から 1時間半。「こんな会にしたい」「会の開催日は?」など、お互 いに意見を交わしながら、方向性や運営方法を決めていきます。話し合い

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の後に疑問がわくと、そのつど電話で確認しました。

 そうして決定したのは、親が笑顔で帰れるように悩みや思いを語り合う 場であること。情報交換の場とすること。発達障がいに限らず、子育て中 のどの親も参加できること──などです。ゆったりくつろげる雰囲気の中 でおしゃべりできるよう、お茶やコーヒーを提供。参加費 100 円も決めま した。そして、最初の打合せから約1ヵ月。月に一度の親の会「おしゃべ り広場たんぽぽ」はスタートしたのです。

 第1回の会の参加者は 10 人。はじめくんのお母さんの顔もありました。 進行役は会の代表でもある林さんです。最初は何を話していいかとまどっ ていたお母さんたちも、子どものこと、学校のこと、さらには料理の話題 や近所のお店の評判など、会話をはずませ、気がつけば予定の2時間はあっ という間でした。

 「楽しくて、気分もスカッとする」。親の会「おしゃべり広場たんぽぽ」は、 参加するお母さんたちにとても好評でした。スタートして半年が過ぎた頃 です。年配のご婦人が自分の娘だという 30 代の女性を伴ってやってきま した。児童館の吉沢さんが事情を聞くと、娘さんには発達障がいの子ども がいるとのこと。そのことでふさぎ込んでいるのを見かねたお母さんが、 娘さんを引っ張ってきたのだそうです。

 「どうぞ、大歓迎ですよ」と吉沢さん。会の雰囲気を体験した娘さんは、「み なさん、いつもこんなに明るいのですか?」と驚いた様子。このとき以来、 毎回参加です。

 「この頃、勉強にもついていけるようになったと先生に言われたの」  「よかったね。うちの子もそうなるかな。あせらないでいよう」  「A小学校には発達障がいの子どもたちに学習支援があるのよ」

 発達障がいのある子をもつ親は、子どもの将来に対し、先の見えない不 安をかかえています。会のメンバーは、子どもの年齢も学年もさまざま。

親も子も孤立させない

発達障がいのある子どもをもつ保護者支援

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そして先輩ママの体験談は後輩ママにとって貴重な情報となります。「その うち、こうなるから心配しないで」��。発達の経過を話してもらうことで、 今後のわが子の成長の見通しがつきやすくもなります。

 会には、「子どもをたたいてしまう。どうしたらいいの」とせっぱ詰まっ た様子で来る人もいます。「私もそういうこと、あった」と、先輩ママたち の言葉。

 解決策が見つかったり、共感があったり。話すことにより、不安や悩み の堂々めぐりからも解放されます。子育てのことばかりではありません。 姑のこと、夫のこと、グチ��。自由に言い合える場があることは親の心 のゆとりにつながり、それは子どもにも影響します。

 その後、はじめくんの乱暴な言動も少し減ってきたようです。お母さん にも笑顔が増えてきました。

 会が2年目を迎える頃、林さんが市に申請していた活動助成金が認めら れました。会の活動をさらに充実させることができます。資金は、講師の 方を招いて発達障がいについての悩みや疑問を語り合う講座の開催などに 活用することにしました。

 そして会がスタートして5年。現在、市内に5つある児童館のうち、3 館にまで「親の会」が広がりました。M児童館のおしゃべり広場に来てい たお母さんたちの「ここに来ると笑顔になれる。うちの近くにもあるとい いのに」といった声もあり、会の代表の林さんやM児童館の吉沢さんの働 きかけもあって、新たに2つの児童館に親の会ができたのです。会には、 子育て中の人に限らず、課題をかかえる子どもたちを支援したいという一 般の方々も参加しています。

 会を立ち上げたとき、子どもたちをあたたかく見守り、その保護者も含 めて支援できるよう、活動を地域全体に広げたいと願っていた林さんと吉 沢さん。着実に実を結んでいるようです。

「見守り」「支援」を地域に根づかせる

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児童館だから できることが あります。

簡単で守れるルー ルづくりがカギ。 A

B

発達障がいのある子どもをもつ保護者支援

事例④

 発達障がいのある子どもをもつ保護者を孤立させず、 地域全体で子どもたちの成長を見守るためにも、親たち が集う場をつくることはとても意義があります。この事例 では、児童館側から 「やりましょう」 と保護者に声をかけ、 親の会を実現させました。必要だと思うことを考え出し、 自分たちから提案していく姿勢はとても大事です。  M児童館は、親の会の立ち上げから運営まで全面的に 支援しています。場所を提供し、会のリーダーとともに ルールづくりをし、広報・告知をして人を集める。そし て児童館のつながりを通して、会の活動を必要に応じ各 機関や施設とつなげる。ただし、親の会の主体となるのは、 当事者であるお母さんたち。毎回の集まりに児童館の職 員は参加しますが、みなさんの話を聞くことに徹してい るのだそうです。

 M児童館の親の会が成功している背景には、いくつか のポイントがあります。

 一つは、月に一度の集まりを勉強会ではなく、どんな ことでも話せる、「おしゃべり広場」としたこと。発達障 がいについて情報交換できるのはもちろんですが、夫の グチでも何でもOKという気軽さが、お母さんたちを集 まりやすくしています。ただし、会員同士が必ず守らな

解 説

解説:大竹先生

 この事例からは、児童館が行うグループ支援の一 つの実践の仕方が見えてきますね。「親の会」があれ ばいいのにと思っている保護者は多い。けれど、何 をどうすればいいかわからない。それを手助けでき るのが児童館です。「まず、やってみよう」。M児童 館の成功例は、そう思わせてくれます。

できる

「発達障がいのある子どもをもつ

保護者支援」の事例について

参照

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